『ささやく河』

  彫師伊之助と摺師てんぐ安のやりとり:
・・・
「使えねえということはねえさ。まあまあだよ」
てんぐ安は言ったが、積み重ねた版木の中から、圭太の彫った経文の板を抜いて、伊之助に見せた。
「この男は、どうしたんだね?」
・・・
「なに、摺れねえことはねえし、摺ってしまえば同じことだがよ。彫りが心もち浅かったり、深かったり、とどくたんびに違ってるよ」
「さいですか」
「言ってやんな。こいつは彫りに身が入ってねえ証拠だぜ」
・・・
  いいねぇ.こういう世界...

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