熱い大根を食うオノマトペが「あふあふ」。これだけでも<やってくれた>なのに、前後をよく見ていただきたい。この作家、「言う」という動詞はいつも漢字書きだが、ここでは平仮名を使っている。だから、「ったままあふあふいって」とずらり仮名がならび、しかも「まま」と「あふあふ」のあいだにあっていい読点がない。読者はオノマトペを、声には出さぬが頭のなかで音読する。したがって、ここは大変読みづらい。それこそあふあふいって読まねばならない。だが、読みおえるとすぐ、「熱くてうまかった」とつづくのである。つまり、読者はくわされたのだ。平四郎といっしょに、熱い大根の煮しめをあふあふ食わされてしまったのである。…
(翻訳家の村上博基氏の解説から)
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日本語の句読点法は,実に深い...そして人間臭くって,生活臭くって,たのしい.いろいろな面で読み返すと藤沢さんの偉大さを知ることができます.