元伯宗旦の漢詩横物

二重箱堀内不仙斎箱書、古筆了延・了意極札。この時代の掛物は圧倒的に消息で、書の多くは有名なあの四角い黒印に惹かれついつい、それら世の中に出回っている元伯は贋作ですが、それにしても惚れ惚れする文字と空間だ。最も尊敬する茶人の魂が染み込んだ書。心が清め洗われる。
一人傳虚萬人傳實 漫々(いちにんきょをつたうればばんにんじつをつたう まんまんたり)」と書いてある。一人が誤ったことを伝えると、世間の人々がそれを本当だと思い次から次へ果てしなく満ちあふれて広めてしまうこと。そういった惧れを指摘する語。全く今のネット中心の社会の人々に当てはまる喝。特に情報の送り手は心すべき重要なこと。つまり万人に向けてなのだが、特にうちの分野で例えれば「一人の有名なクリエーターが本筋と異なったことあるいはそれっぽい作品を発表すると、ネット上でその関係する信者がその情報源のことをやたらと広め、収拾がつかなくどころかその後にもし真実を伝えてもかき消されてしまう」といったことであろうか。

《五灯会元.卷11.临济玄禅师法嗣》:「僧问:『多子塔前,共谈何事?』师曰:『一人传虚,万人传实』
【出處】:漢·王符《潛夫論·賢難》:“一人傳虛,萬人傳實。”
【例子】:問:“如何是東禪家風?”師曰:“一人傳虛,萬人傳實。”(宋·釋道原《景德傳燈錄》卷21)
五灯会元【ごとうえげん】20巻、目録2巻
大慧下4世、大川普済の下にいた慧明首座の編。淳祐12年(1252)に成り、翌年に刊行。中国南宋の禅僧普済編とも慧明編とも伝える禅宗通史。「五灯」は宋代成立の禅宗史書である景徳伝灯録、天聖広灯録、建中靖国続灯録、宗門聯灯会要、嘉泰普灯録の五つを改編して一書とした総称で(灯は不滅の法灯を意味し)、それらを整理集成したので「会元」という。

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